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マンガ家インタビュー

2.海を渡るアンパンマンたち、やなせ先生の国際感覚

日本のマンガが、世界中で翻訳され、人気を集めている一方で、各国・各地域において、 日本マンガとは違った発展を果たしている様々なマンガが世界中にある。
「国際」を謳う当館では、そうした海外のマンガ事情の調査も行い、 またその成果を企画展として一般公開したいと考えている。

「外国語に翻訳されているもの[=日本マンガ]も、すごいたくさんありますけど、 それをみるだけでもちょっと面白いと思うんですよ。
「アンパンマン」とかも韓国語とかに翻訳されてるんです。台湾でもなってます。」

[インタビュアー:ヨーロッパでは?]

ヨーロッパはですね、ビデオは行ってますけど、本はまだフランス語になってるとか、そういうのはないですね。」

「あのー、[アンパンマンは]外国人にも結構受けるんですよ。日本にいるアメリカ人とか、 子どもはみんなファンになっちゃってね。帰るときに、[略]向こう行くとアンパンマンがみられないっていうんでね、 ビデオを買い込んで持って行ったり。
だから、ビデオは結構世界中に行渡っていて、よく売れてます。
[略]

[インタビュアー:その「アンパンマン」のビデオというのは、 吹き替えがされている?]

「うん、そう。全部向こうの人が入れたみたい。」

「ぼくが行ったときは、大友克洋はすごい向こう[=フランス]で人気がありました。[略]
いま日本で言えば、浦沢直樹でしょうね。
ただ浦沢直樹の場合はね、どう向いても顔が外国人の顔してるんですね[笑]。あんまり日本的じゃない。 外国人が見る場合はね、やっぱり日本的なものに惹かれるんですね、どうしてもね。向こうに全くありませんのでね。 外国っぽい顔してると、何かしら向こうじゃ変だと思うみたい。 何で日本人なのに外国人の顔を描くのかって聞かれたことがあるんだよね。 それはつまりインターナショナルなんだからいいんじゃないですかって言ったんですけどね[笑]、 外国人からみると、なんで日本人なのにこんなに鼻が高く描いてんだ、と[笑]。」

ところで、やなせ先生は別の場所で、 「漫画の原則はパントマイムだと思っている」と発言されている。[※6]
その心は……

「なんでパントマイムかっていうとですね、どこに行ってもわかるわけですよね。 要するにセリフがなければエスキモーであろうがなんだろうが、わかるんで。つまり、 翻訳する必要がないんですよね。誰がみてもわかる。
だけど、原点を言えば、要するにひとつの「絵の国際語」としてですね、どこ行っても通じるっていうね。 だから、それですごい面白いものができればですね、それがまぁ一番いいんじゃないか、と。」

[※6] Back
「ぼくは、漫画の原則はパントマイムだと思っている。エキゾチシズムでうけるのではなく、全世界どこへいっても理解できる無国籍のものがいい」(やなせたかし『アンパンマンの遺書』岩波書店、1995年、p.p.137-138)。やなせ先生の産んだ有名キャクターであるミスター・ボオはそうした考えのもと生まれた。


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